欧州連合(EU)参加国のナショナリズムが躍動
発刊日:2024年6月12日(on 2024/6/16配信;#1/2)
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1952年の欧州石炭鉄鋼共同体として総会が開催された。この共同体は国境を越えた労働組合の連合会がその原点であった。その後、経済共同体(ECC)として名乗り、関税の撤廃から国家統合を促進させ、現在の欧州連合(EU)まで突き進み、現在では欧州中央銀行が参加国のユーロ建て国債の発行を統括し、EUに参加する国家から財政の自立権が消滅した。
欧州連合(EC)の急拡大を機に2022年ロシアがウクライナに侵攻した。中東ガザ地区のハマスはイスラエル領内のキブツ地区から民間のイスラエル市民を100名以上拉致し、イスラエルは国際戦時法に基づいてハマスに対し宣戦布告を告示し、ガザ地区に戦闘を開始した。
今月号は、欧州議会の選挙結果をテーマとしているが、気付けば欧州議会は既に選挙制度を確立していた。欧州議会の定数は720議席でこの6月6日から選挙が始まり、6月9日で終わり、6月10日に選挙の結果が発表された。労働組合から始まったこの欧州議会は、国連が広報するSDGsやESG投資など、所謂、左派の政治団体が活動の主力であった。
今回の選挙で、世間の予想を大きく外した重要なポイントは、右派の急伸であった。その結果が著しく謙虚であったフランスでマクロン大統領は前例なき解散総選挙を決断、都知事選挙と同日の7月7日を決選投票日とするフランスの選挙はマクロン大統領における最後の賭けとなった。
フランスのマクロン大統領が失脚し、右派の大統領が新しく政権を担えばEUの基本方針は大きく舵取りが変わるのは必須で、環境政策の図軸となっていた緑の党が縮小し、右派が台頭しているこの欧州選挙は21世紀の時代の道しるべとなる大きな分岐点といえる。EUを促進する左派中道勢力は参加国からすると、十分な左派勢力で、右派の意見が促進できる土壌では到底なかった。
メディアが報じるSDGsなど、国連機関が推奨する政策の矛先が変わり始めているという事実だ。日本では京都議定書を旗印に国連が推奨する様々な国際的な課題を訴求しているが、一呼吸おいて紛争の続く国際社会の現実を直視することが日本の責務とも考える。2014年5月6日に当時の安倍総理大臣はNATOを必然のパートナーという言葉を使い軍事協定の道を開いた。
ITの世界的大手はドローン操縦に活用できるAIプログラムの提供に始まり、欧米列国は戦時調達物資の供給で活況を呈しているのも事実。ロシアの開戦当時、国内の政府筋はプーチン大統領の失脚を建前にNATOとの関係を強化してしまった。対米国が主な対象であったが集団的自衛権の行使を憲法の解釈という一言で政府が開かずの扉をこじ開けてしまった。
今年の4月にフィンランドが参加したことで、このNATO参加国は31ヵ国となり、NATOは東西冷戦後のあらたな体制を作った。この集団的自衛権を理解するのは権利と義務である。他国からの軍事的侵攻等が勃発もしくはその危険があると判断された際に相手国に対し参戦できる権利とNATO軍が開戦を決断した時点で、参加のNATO軍として参戦の義務があるという点だ。
参加した国の軍隊は自国を守る軍隊からNATO参加国を共同で守る軍隊へと変化する。その本質を説明することなく、日本は集団的自衛権の行使を事実化し政策として単独で暴走している感があるが、今からでも遅くはない、広く国民に対し国際戦時法に基づく参戦権に掛かる権利と義務を整理し、国民総選挙によりNATOなど集団的自衛権による参戦の承認と軍隊の分離や再編を図るべきである。
この重要な課題整理を経ずして、憲法の改正など論外で、憲法の第九条に第三項を追加する議案が遡上されること自体、憲法改正の本質を見失っている。現在の事案に即した日本独自の憲法制定が急務と考え、日本人の徴兵制を再考する討議の手法をこれから準備したい。
日本の武士は人切包丁を使い、人を殺すことを仕事とした。軍人は兵器を用いて戦争相手国の軍人を殺すのが仕事だが、ITが発達し戦地の軍人がロボット化し、情報収集を衛星の高感度カメラが収集し、対心理情報の戦略にAI頭脳が使用されている。敵国へのミサイル投下も無人の小型ロボット機が襲来し、絞り込んだ敵地襲来がいとも簡単にできる時代となってしまった。
今度のフランス選挙で右派が台頭することで、NATOの軍事圧力がガス抜きされロシアの反発も落ち着くことが予想できる。ウクライナへの軍事支援を拡大するほど、ロシアの反発が拡散するのは容易に想定でき、ウクライナの安定は早期の終戦協定の締結にあるといえ、その鍵となるのはオデッサの港である。小麦の輸出主導権をベースに国境の見直しが現実的な妥協案と考えられるのでは。
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