循環しない日本の資金は、何処を彷徨っているのか
発刊日:2024年12月12日
政府が公表している令和6年度の国債発行総額は182兆円規模となっている。この182兆円という数字は財務省が発表する国債の発行計画の数値だが、先月11月29日のリリースで5兆4,739億円が補正予算で追加された。結果、令和6年度の国債発行残高は約187兆円となった。 |
先般から政府キャッシュフローの話を幾重にもお伝えして来ましたが、企業の会計決算で活用されているキャッシュフローの角度から、国内の資金が十分に作動していない経済の実情をキャッシュの目をもって推察し、タイトルの疑問を解析してみたい。 |
既に発行された国債資金187兆円の内171兆円は市中による調達であることから、日銀が指定する25社のプライマリーバンクにより指定落札され、プライマリーバンクは日銀から調達した171兆円を国庫金として財務省の国庫金口座へ入金される。この資金が一般会計及び特別会計として、令和6年度に政府から市中へ資金が支出されて行く。 |
この171兆円は、特別会計分と一般会計とに2分され、全く支払先の仕組みが変容する。一般会計は昨年度の6月ベースで各省庁から提出された予算を財務省が編成し、国会の承認をもって決定される。特別会計は税収と支出をセットで組み当てしていることから、該当する税収の全額を既定の支出先に移動するだけだ。 |
この国会の承認のいらない政府資金が特別会計の勘定となり、財政をひっ迫している社会保障費の補填に37.7兆円を一般会計から補い特別会計の収入部門の資金として割当し、国民の保険と年金などの社会保障を特別会計で運用及び管理している。則ち、一般会計の編成を予算委員会で広報しているのが政府のキャッシュフローのように映っている。 |
さて、特別会計の支出総額は令和6年度の見込み総額で208兆円となっているが、一般会計予算112兆円(令和6年度、補正予算を含まず)の約2倍の規模である。一般会計と特別会計の支出総額を合算すると320兆円となり、なだらかなインフレの発動で実質GDPで約600兆円(内閣府の公表サイト(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html)を参照)を上回った。 |
GDP600兆円の内、国民が使ったお金の総額が312兆円(令和6年4月ベースの支出割合から算出)となるが、対GDPの52%となっているのが実情だ。欧州のユーロが誕生したころ、米国のドルが崩壊する噂もメディアの世界では聞かれていた。されど、米国は高度に成長したインフレを鮮やかな金融政策を発動してドルは世界の覇権通貨としての地位を守り続けている。 |
27兆ドル(約4,104兆円)と云われる2023年度の米国GDPに対し、米国の国民と企業が使った資金の総額は概算で2,870兆円相当となった。個人と法人の消費が約7割を占め日本の約1.5倍の比率で経済が循環している。日本の国民と法人の消費が対GDP比率で52%と約半分に対し、米国は約70%と個人と法人の消費支出により経済が機動的に循環している。 |
国民の消費支出を除く、残りのGDPを醸成する資金は、個人の住宅と法人の設備が中心となり、投資勘定の支出が国内GDPの48%を占めるというのがGDPの外郭だ。同時に消費支出が52%にとどまっている抑制要因として大きな課題は消費税の問題だ。米国に消費税がなく、州の判断で売上課税等が実施されているが、消費者に一律課税するような仕組みの直接税はない。 |
国内の野党が主張する消費税を反対する理由は、本件と同様に消費税の課税が国内の有効な資金循環を阻害しているとみる。特別会計を合わせると計320兆円もの資金が毎年、政府から民間へ資金が一度は流出している。仮にこの個人及び法人の消費が10%増加するだけで、GDP値は5%以上アップする理論となり、波及効果は計り知れない。 |
経済は流通し元受け企業から下請けへとそして孫請けへと循環する。この仕組みを縦の経済循環とすると、横受けの経済循環とは何かを一考する。楯列方式の軸は時間としてイメージすると政府が予算を民間に払い下げるイメージとなるが、政府が時間を指し止めし、横向きに支出をするとはどのような政策モデルとなるものか、さて、この横向きの軸は何を設定すると発動が有効となるのか |
回答は、支出先の変更とみる。政府が支出する縦軸の支出先は予算編成や入出金を一元化した特別会計ですべて楯列に支出し消化する。古来の日本にも存在した関所の制度が分かり易い。全国の藩に設置されている関所を通過しなければ、自分の田舎へさえ戻ることができない。 |
今のパスポート制度のようなものだが、既存の政府資金がまるでインターネットのドメイン管理の様に幾重にもネットワークを張り巡らし、藩が定める各種掟に基づき人の移動を管理した。この関所のような特別な権益を廃止し、役所の仕事を分配するのではなく全国の中小企業でも自由に参加できる、オープンな解放された市場だ。 |
他、今懸念する現代の関所がOBDC(中央銀行デジタル通貨)の導入だ。現在、人気が低下する紙幣や硬貨のお金は、自由にどこでも使用することができる。万が一、現金(キャッシュ)がなくなり、全てがデジタルマネーに変更してしまった場合、この関所問題が脳裏を過る。一見、消費動向を刺激すると広報が行われている昨今だが、この自由度の少ない通貨にどの程度の経済効果があるかは疑問である。 |
アナログとデジタルという反意語があるが、21世紀の経済テーマはこの相反する2局の融合ではと考える。今回の新札から登場した渋沢栄一は「論語と算盤」と言った。米ソ冷戦時代を経て、ベルリンの壁が崩壊され、新たな世界のメカニズムが構築されていく今、高度成長期の幻影に執着し、設備投資という打ち出の小づちに翻弄され、国内需要の創出に目を向けない政策では、国内需要は拡大しない。 |
21世紀に社会が求めているのは複雑な関数や理論を投じた難しい理論経済学ではない。日本国民のそれぞれが様々な課題を抱えて生活している。年間320兆円とする毎年の国家予算をどこに支出するのかを再考し、今後の日本経済の行く末を占う。今の縦列方式の資金還流モデルで経済は成長できない |
従来の政府予算の支出モデルは、設備投資を大企業に分配し、下請け企業がザルで水を抄う理論で個人の所得を確保した。政府の予算が中小企業に対し活用されるモデルが時代の急務だ。米国では、政府事業に対し自由に参加し、自由にビジネスを競争できる、開かれた資本の市場がある。 |
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