米国発、関税の復活による自国の再生
発刊日:2024年11月12日
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先の米国選挙でトランプ元大統領が再選し、中国を主なターゲットとする大幅な関税の引き上げが目前となった。さらなる財政緩和を促進させ、米国の再生にその狼煙を下ろした。労働組合などの集票力を背景とする米国民主党と選挙で熾烈な戦いを繰り広げ、結果、共和党の政権が返り咲いた。民主党が政権を掌握したこの4年間がやっと終焉した。直近のイスラエル及びウクライナの戦局と歴史は大きく動き出した。 |
この選挙で大きな転換期を映し出した。一つに米国のダラスで暗殺された故ケネディ元大統領の甥のロバートケネディジュニアが民主党を離脱し、トランプ陣営に参入した。トランプ次期大統領は全米の選挙演説のメッセージとして「私はイスラエルを全面的に支援している、されど、もし今回の選挙で負けることがあれば、それは米国のユダヤ人が私を応援しない場合に起こる」とスピーチした。 |
地の底から響いたのか、このメッセージは米国の若者を中心に拡大し、民主党の牙城をことごとく打ち破り、完全な圧勝であった。片や中国政府はAPECで自由貿易を提唱した。この自由貿易とはグローバリズムという仮面を被った「一帯一路」の事であり、米国の資本主義が唱えた自由貿易とは全く異質である。 |
さて、関税の話に戻る。国家の財政管理上大きなポジションを占める関税の政策。タリフ(関税)マンを自称するトランプ次期大統領から観えている国家の関税政策は如何なるものなのか、経済交渉の切り札のようにも見えるこの対抗措置にどのような発動の効果があるというのか。事業の保護と経済の発展との2局でこの関税問題を見据えてみる。 |
農産物の世界で多くの国が施行している農産物の高関税政策。農民や漁民など、食の関連事業者を保護する目的から農産物に重度の関税を課し、兼価な農産物の輸入を戦後から抑制してきた。旧東ドイツと西ドイツが統合しEUの骨格が組成され、インターネットの普及が始まった1995年期ごろから、世界はグローバリズムの全盛期に入った。 |
EUもフリーの関税協定から始まったEU経済共同体が先の名称であった。関税の殲滅が始まった世界の国々で何が起きたか、欧州の実情を垣間見ればその本質も見えてくる。関税が0%となると、安く作れる国から荷物を移動し、自国で消費する経済が当然と拡大する。仮に全世界の関税を全て撤廃したら、世界の物価が均一化されるという経済学の理論的な考察もある。 |
今、EUのイタリアあたりでマクドナルドのランチセットを3人で食べて日本円で1万円では足りないというのが実情だ。欧州も米国も日本から見ると物価が2~3倍の開きがある。控えめに見て2倍の格差が生じているとしたら、日本円の対米ドルと対ユーロの為替を半分に是正すれば経済の歪みは解決するといえる。関税は、政治的な圧力を行使する裁量ではなく、国内物価の価格是正を図る大きな役割も備えている。 |
輸入品に関税をかけることで、国内の流通価格と輸入製品との価格を均整化する。仮に関税を掛けなければ、安い輸入物価が国内の高い物価を抑制させてしまう。安くなるのではなく、適正な価格が崩壊してしまうのである。これが関税による国内産業の保護政策のメカニズムだ。日本でも輸入した小麦に1kgあたり65円の関税を徴収している。 |
徴収したこの関税を国内農家に補助金として還付する。毎年、国内の小麦業者は作付けが決まると、政府指定の製粉業者等と青田買いと云われる小麦の先物取引の契約を締結する。集荷した小麦を納品すると、集金した関税を農家に支払い、製粉会社は輸入小麦と同じ価格の仕入代金を農家に支払う。これで、輸入業者も農家もお互いに保護され、小麦の作付けが保護される。 |
一見、関税は輸入を妨害し過保護な国内政策と本筋を誤りがちな要素を備えているが、為替や物価の価格が対外な評価と適正なバランスがとれていれば何ら問題はないといえるが、理論や理想論だけで経済や政治が動かないのは明白の事実でもあり、関税による保護貿易はアンバランスな経済を是正する有効な手段と改めてその導入効果を評価する。 |
世界の関税を撤廃し、自由貿易協定を世界が締結し、その後に為替の標準化を図り、世界の物価が標準化される。この指向性には決定的な欠陥がある、物流の問題だ、コロナ過を期とした物流コストの増大化は、部品単位を広域な世界ネットワークを駆使することで、世界の物流網はその供給力を軽々と乗り越えてしまった。人材も枯渇し、燃料は高騰した。 |
米国のHP社では、自国で製品出荷せず、輸出先の国に自国の企業を設立し、現地で生産し、現地だけで販売する。国家単位での内需拡大だ。日本でもHP社は躍進し、スモール企業の大きな味方ともなっている。今のEU(ヨーロッパ連合)のように関税を撤廃し、資本と人材を流動化し、決済通貨(ユーロ)を発行し、最終的に自国の通貨発行権と国債の発行を連合する中央政府に帰属してしまう。 |
不思議と中国の中央政府が提唱している一帯一路や共通通貨の発行などの政策のすべてが、このEU(ヨーロッパ連合国)が成立した経緯とあまりにも似ている。なぜ、社会主義を提唱している中国が自由主義を唱え、共通する新たな通貨発行に死力を尽くしているのか。そして、資本主義を唱えてイギリスから分離独立を果たしたトランプ次期大統領が、関税の撤廃や過度な環境問題に対し反旗を翻しているのか、その鍵は国家の関税にあるのやもしれない。 |
国家主権という言葉がある、まず掲げるのが通貨の発行権だ。自国の通貨発行権を保有することで、国債の発行、課税の徴収、財政の投資、と国家の永続的な存続維持を目的に自国の判断で国家の財政を堅持する。則ち、自国通貨の債券の発行や財政投資が実施できない国家に完全なる国家主権は存在しないということだ。国家における中央銀行が政府から分離した組織だという建前は分かる。 |
時の政府が財政の拡大を図り、急激なインフレを引き起こせば、自国の通貨は暴落し、財政は破綻する。その反面、財政投資を縮小し、過度な資金引き上げに走れば、国民と企業の経済は委縮し、同様に経済も破綻する。適正な距離を保ち、中央銀行と政府とのバランスを図り、安定したGDPの成長が財政の柱であり、自国通貨の発行権を放棄することは国家主権の放棄と何ら代わりがない。 |
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