戦後初めて、世界は大きな曲がり角に突入した
発刊日:2024年8月12日
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その道が"右"か"左"か、各国の政府中枢機関はこの道をしっかりと的確に見定めている。人口が急増した重厚長大の成長期を経て、リーマンショックが起きた2008年の1億2808万人をピークに日本の人口も減少に転じ、日本だけでなく中国や欧米も含めて多くの先進国が同じ境遇に漂着した。
共通点は、先の戦争が終結し、安定した経済状況下、大いなる経済の発展を遂げたことだ。鉄道、道路、航路を拡張し、住宅を広げ、都市部にはオフィス街を形成した。近代医療の発達による平均寿命の高齢化もあるが、どこの国も高齢者の人口増加が大きな課題ともなっている。
高度成長期を一言で表すと重厚長大が的を得た言葉であった。そして、人口が増加から減少に転じた今、重厚長大は軽薄短小と時代が逆転した。この急先鋒が1995年から始まったIT産業だ。大型の都市開発やプラント建設、造船などの鉄や油のピークが過ぎ、半導体が時代の基盤を支え、AIの頭脳となるGPUの企業、米国エヌビディア(時価総額489兆円)で世界一の企業となった。
経済学の中に比較優位論という学説がある。グローバル化が促進され、世界単位での分業化が謳歌した。中国共産党の一帯一路はEUがNATOと国連をバックに阻止、同時にイギリスはEUを奪回し、EUの欧州中央銀行から通貨発行権を戻した。スペインカタルーニャ州の独立運動も激化が急伸し、あのフランスも国民連合(RN)の右派が台頭、一見、東西の冷戦が復活したかのような見解もあるが、これは南北民族闘争の始まりと捉える。
グローバル思考を盾に民主主義を矛に、EUはヨーロッパを統合し何処まで拡大を図るのが目標か。フリーの関税協定を世界と結び経済の統合とグローバルパワーが国際分業化を生み出しいる。次に為替の統一が完成すると、国債の発行が自国から争奪されるのが最終のステージとなる。
イギリスの国民はこの危機に気が付いた。国家の中央銀行には政治からの独立性が必須だが、万が一、自国通貨や国の国債の発行権が自国から外国の政府機関に移転したら、次に何が起きるか。政府の国債乱発による通貨のインフレも、敗戦時には紙くずともなる戦時国債の処理も、全て管理する欧州中央銀行の決定を委ねることとなる。
イギリスの国民はこの事実に思慮した。ロンドンのポンドが世界の国際通貨であった時代もあり、そのポンドが国際決済通貨から退陣し、ましてやユーロ建ての国債発行を自国で決定できないとなれば、既に独立国家ではない。発行に関しては国家予算であることから自国民の採決を経て発効することとなるが、最終的な発行権は欧州中央銀行がこれを決定する。
日本はプライマリーバンクが1,000兆円を超えた国債を守る。毎年200兆円規模の資金発行を担い経済を支える。毎年、この資金から日本の経済が動いているのは明白な事実だ。毎年、国民や企業から集められている資金を政府が予算で使うのではなく、一度、国が発行した国債の資金を国内の行政府に予算を分配するのである。国内の令和6年度の一般会計予算が概算112兆円、国債の発行総額が概算182兆円であることから、差額の70兆円は何に使うのか
この70兆円が、国民と企業が令和6年度に納める税収総額となる。よって、一般会計の112兆円が10年の長期国債を中心に、税収の先払い金として確保する70兆円相当を1年未満の短期国債と1~5年以内の中期国債で充てる。即ち、財務省が回収した国税を財源として国債を弁済するのである。
企業の会計及び経営者等であれば、このキャッシュフローは理解が速いことと思いますが、政府のキャッシュフローが苦労している点が、国債の金利負担であることは言うまでもありません。仮に1000兆円とすると1%の金利が上昇するとこの国債調達に10兆円を一般会計収支に組み込まなければなりません。
そこで、政府と財務省の頭脳が結集して編み出したのが分離利息振替国債だ。これは2002年から銀行等で販売が始まった利息国債で、最長で40年物という新たな国債を発行し、国債の金利に償還する方式だ。この方式は、米国のクーポン債を参考にしたものだが、市中から資金を調達せず急増した国債の金利を弁済しなくてもよく、今は亡き手形のジャンプのようなものだ。
ただし、このキャッシュフロー方式はひとつだけ弱点がある。分離した国債の利息が発行時に利息相当額を天引し発行することから、国債の償還日までの満期利息を先払いしなければならない。結果、国債の残高は急速に膨らみ続けるのがこのシステムの欠点だ。されど、なだらかであるが経済の成長が毎年2%と安定が続けば、この複利方式の金利負担から軽減されるのがその証拠だ。
先般の8月5日、世界の投資家が狼狽し、日本の株式を投げ売りした。この投資家の多くは大型の円ショートポジションのトレーダーだ。日本の円を売り撒くってきた円の投機的なセラーたちだ。ここからは予測であるが、日銀が市中金利の段階的な上昇を公言し、急激な円高が20円近く進むと完全にレバレッジが破綻したのであろう。仮に7月上旬に1ドル160円当時に値幅5%の8円のポジションと仮定すると円売りの投資は20倍の投資が可能だ。
この状況下で、ドル円相場が2024年8月5日に142円を瞬間的に相場を切った。差額は18円の円高ということとなり、160円台で20倍投資の円ショート陣営は預託していた取引の担保が消滅した。もしくは大規模な損切を決断し、狼狽売りした。ドルと円の為替取引は、1日に160兆円クラスの出来高で推移し、世界の為替取引出来高の第3位の通貨である。円は欧米が金利を反転させたにも関わらず、円は単独で世界の底辺を固辞した。1000兆円を超えた国債を守る責任からだ。
その規模に比べ、日本の株式市場は1日5兆円程度とその規模は極めて小さい。日経平均が4万円を超えた際にやっと企業の時価総額が1000兆円を突破した。一般的に市場の数パーセント(3~4%程度)を超えると市場で右から左に即、現金化もできない。株式市場であれば、2000億円程度を超えると市場影響力が甚大化する。よって、株式市場に対し最適なベストファンダーは投資信託の投資マネーである。短期のバイヤーは売らなければ投資の利益を確保できない宿命からである。
昨日、退陣の発表のあった岸田首相はこの積立ファンドを盾に大いなる政治的な功績を残した。新NISAの恒久減税だ、この減税効果は株式市場に対して大いなる効果が見込まれた。この恒久減税により給与所得者の預金から株式投資へのシフトを少なからず起こした。以前の株式バブルの際はNTTが急騰し多くの国民が株式相場で経済効果を実感した。今回の株式暴落により、やっと海外勢を中心とした短期売買の投資家たちを一掃し、次期4万円戻しのステップを経て、日本の新しい株式の時代を向かい入れることとなる。
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