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発刊日:2023年12月12日
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2023年11月12日の151円47銭をピークに、円安相場がようやく反転した。
本日、NY市場での相場は、本日12月17日(日曜日)午前0時15分に141.49銭を付けた。
この一ヶ月で1ドル10円も円が急騰し、円安の局面からようやく脱却がかなった。
今回は、政府の為替介入ではなく、市場原理による相場の反転が起こったことが重要である。
いよいよ欧州と米国の金利が下がり始めると市場は予想し、金融筋もいよいよ米ドルを売り始めた。
米国のFRBは政策金利が5.25%という高いレートであっても、市中への資金還流を緩めなかったからだ。
この米国の政策金利である年率5.25%というレートはこの日本にもあった。
第一次オイルショックのあった1973年の年であり、田中角栄が始めた日本列島改造論の時代でもあった。
原油相場の急騰により、消費者物価も高騰し、狂乱物価の時代がここから始まった。
当時付けた日銀の政策金利が、5.5%といかに高いレートであったか、
不思議なことに、当時のオイルショックが始まった背景にも、第四次中東戦争がった。
当時のイスラエルは、エジプト・シリアを始めとするアラブ連合諸国との戦争であった。
先の戦前までは国際基軸通貨がポンドであったことから、
不思議とイギリスの政策金利がまず上昇し、後に欧州やアジア諸国で戦争が勃発していた。
戦争が始まる前から、装備の調達や経済の復興需要が金利を上げていた時代でもあった。
先行していた欧州と米国の高金利政策が反転するなか、
米国にリセッションが起きていないのは米国FRBの的確な判断があったからだ。
通常、各国の中央銀行は高金利と同時に市中資金を抑制するのが常だ。
今回、FRBは金利を上げながら、金融市場への資金供給も同様に流し続けた。
長く続いた0.25%の超低金利時代と何ら変わらずにその措置をとった。
狙いは、経済のリセッション封じであり、金融市場や不動産市場などの成長性である。
当刊、しんか7月(第43号)で、円高誘導の話をした。
世界の機関投資家は、欧州と米国の金利低下は織り込み済みだと、既に説明した。
政策金利が下がるとその国が発行した国債がまず下がり、リセッションが起こると株も下がる。
今回の米国は、市中への資金流入を継続しながら、利下げの思惑を織り込んだ。
結果、米国の株式は上昇を続けたが、米ドルを上昇させる材料は既に出し尽くした。
この背景から、市場が注視しているのが、日本の円ではと見受けられる。
世界の先進国通貨の中で、金利を上げていないのは日本だけである。
端的に言うと、日本の政策金利をマイナス0.1%に据え置いたのは、日本の財政事情があったのがその理由だ。
日銀の政策金利など、到底、興味の少ない方でも、少し不安を感じているのは、日本の経済成長の見通しである。
更に1000兆円を超えた日本国債の問題もある。
米国債のように世界の金融市場で自由に売買しているのであれば何ら問題はない。
されど、日銀は禁じ手とされる国債の買取を開始し、前例のない暴挙ともいわれている。
金利の上昇に伴う、日本が抱える金融のリスクは、以下、2つがある。
金融のリスクは相場の下落による、保有債券の評価損による含み損と、
与信の低下に伴う、資金の不足による、市場での資金ショートのリスクだ。
一つ目の対象は、国債や債券などの相場の暴落だ、政策金利が上がると連動して市中の金利も上昇する。
市場は、新規発行の債権が上昇することを見込み、含み損を敬遠する投資家は国債や債券の売却に走る。
結果、債権や国債の相場よりも更に安くても売るという、投げ売りが増え、売買価格が低下する現象が起こる。
二つ目は、ディフォルトの問題、一例に、現在のトルコの政策金利は年40%である。
年率40%というレートは、月に3%を超える金利で住宅や物品の市中レートはこの2倍相当と予想されている。
一昔前のサラ金時代の高レートである、同様にトルコの人件費が40%上昇するれば、国民の生活は平穏である。
この40%ものレートとは、100万円を140万円で返す借用書ということになるが、
世界の金融市場で発行されている債権の額面が100万円表面レートが5%程度となっているが
この債権が市場で売買されている時価相場から、算出したのが市場レートである。
市場レートが40%相当の場合、額面プラス満期までの残存金利の償還を含めた合計を125万円(100%)と仮定し、
40%の金利収益を見込めるという積算であれば、この債権の価格は125万円×0.6=75万円が時価相場ということになる。
これが、市中レートという2つ目のリスクの中身だが、日本の国債で例えれば次に期すような計算となる。
今月発行する新規の中期国債(10年満期)の表面レートが、昨年来の0.2%からこの10月時点で0.8%にまで上昇した。
同時に本日の市場金利が、年率0.701%で推移しているので、新発の国債相場は以下の計算で積算となる。
以下の計算を理解いただくことで、表面レートと市中レートの意味合いと、今回の円高が自立反発した根拠が見える。
国債100円あたりの受取総額を計算(100%)は、「 額面100円+(表面レート0.8%×10年満期)=100+100×0.008×10=108 」
時価総額を市中レートから理論値を計算(相場) 「 相場(x) 円= 108円×(1+市中レート0.701%×10年)=115円57銭
額面が100円、表面レートが年率0.8円、償還10ヵ年の国債が、市中で115円57銭となり、市場の市中レートたる0.701%の根拠となる。
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