新たな日銀の総裁は、日本の金融政策を如何に舵を取るか
発刊日:2023年2月12日
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イールドカーブコントロール(YCC)という金融市場の言葉がある
今、日銀が鉄壁の資金投入で日本の金利を守っている
公表する日銀の財務データを見ると国債の保有残高は526兆円だ
世界に発行する国債の半分を日銀が保有している
仮にも日銀が国債を保有するのは従来禁じ手であった
バブルが崩壊し、国債の金融市場での流通に苦労が掛かり始めた2001年あたりが転換点だ
なぜ、日銀が政府に貸し付けた国債を自社で保有しているかというと
償還と利払いで昨年に発行された約37兆円の国債流通が停滞しているのが原因だ
この国債はプライマリーバンクが一度引き受けして、金融市場で売却し、日銀への借入金を弁済する
これが、市場原理に基づく本来の金融政策だ
YCCは、日銀が市場で国債を買い支える市場操作を指す
SELL/BUYの取引が連続して起こり、1秒間に200回程度のピッチで価格が形成されるのが市場だ
この日銀の暴挙とも市場で云われているYCCに対する市場の反応は明らかであった
シンガポールやニューヨークの市場では、日本の国債をこれでもかと売りまくった
されど、民間のヘッジファンドと中央銀行では市場の資金決済ボリュームが格段に違う
海外の機関投資家が信用取引で大量に国債を売却すると市場での価格が低下する
よって、空売り投資家は更に大量に売却しなくては価格が下がらない
その売却される国債を日銀が10兆円単位のキャッシュを用意してこれを全量買う
新発の国債が市中で売却されている価格を仮に100とすると
本来の需給バランスからくる市場価格が90円とする
国債の発行残高が年率1%とするとこの国債は90円に対して1円の金利となる
結果、この90円の国債利回りは、1円÷90円で1.11%となるのが市中の金利だ
今、世界の金融市場が注目するYCCが執行する金利目標は長期国債の0.5%が断固たる日銀の目標値だ
この金利を超える価格で売却された日本の長期国債を全て購入する、全てである
この徹底した金融操作により、国債の価格低下を抑制することで、国債の市中金利を上昇させないのがYCCだ
国債の残存期間が10年ある長期国債が5%価格が下がると市中金利は年間で0.5%市中レートが上がる
自由で開かれているはずの金融市場とは言えない常識破りの日銀戦略と云われている所以だ
されど、一気にこのYCCを解除すれば日本の国債は暴落し、市中金利も上昇する
まず、金利が上昇することで、対ドルで円が急騰する、円高と金利の上昇で株式は総崩れとなり市場の混乱も予想できる
金融市場のプロの目から見てもこのYCCの解除はだれも見込んではいない
この4月に就任する元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏
和製バーナンキの異名もついた東大で教鞭も取った経済学者だ
米国のバーナンキはリーマンショックを金融政策で再生させた金融の司令塔だ
バブルもリーマンからも立ち直れない日本の金融市場
日本の経済から見えてくるのは、内需拡大に対する偏見だ
バブル崩壊後に30年以上もの金融緩和政策をいくら行使しても経済が循環しない
大企業の手元にある余剰金は300兆円を超えるという
日本のGDPが580兆円規模であることから、GDPの半分以上が滞留しているのである
2022年3月31日に日銀が保有する国債が526兆円であることから、その保有国債を活用した金融政策に舵を取るのはいかがか
この4月就任する植田新総裁にはYCCの段階的な解消と市中レートの上昇容認を市中も望んでいる
一時1ドルが152円台まで急騰したが、今年度からの為替は市中レートの上昇を見込んで円高傾向が予想される
最も重要な点は、輸出依存のGDPから脱却し、内需拡大によるGDPの成長が今後の金融政策の最重要課題だ
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