発刊日:2023年9月12日
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東証の銘柄が1.4倍、NY株式が4.4倍、この数値は株式指数の一つで、PBRという指数である。
この4月ごろから東証がPBR一倍以下の銘柄に対する改善要求を突き上げた。
異例中の異例で、あるコンテストの参加者に対し、もっと技術を向上して得点を挙げてくださいと忠告しているのと同義である
このPBRは、上場している銘柄の1株当たりの純資産総額を1株の単価で割ったもので
倍率で1倍を下回る銘柄は、純資産の合計を会社の価格とした場合、全株式の総額より安いということになる
PBRが1倍を切ると買収リスクが拡大し、株式公開買い付けで市場価格より少し高く買い付けたとしてもお釣りがくる計算だ
会計用語の中にのれん代という勘定科目がある
企業の売買取引の際に使われる科目だが、買収金額と純資産総額を差し引いた差額の勘定に使うのがこの"のれん代"だ
PBRが1倍を下回るという事態は、この"のれん代"がマイナスになる、即ち、買収した企業にお金をプレゼントするという論理だ
買収後、会社資産を切り売りする取引事業者をグリーンメラーと海外では云われているが、PBRが1倍以下であれば、買取と同時に売却も簡単だ
バブル経済の時は株価が急騰していることもあり、まず、希薄な株価状態であったが、崩壊後はPBR1倍以下が多発した
この企業群は将来の利益を株式市場が全く評価していない確固たる事実だ。
先般から問題となっている日銀のETFによる株式市場の大規模な保有状態
政府の資金や官僚の政策をいくら投入しても、焼け石に水であった
本日の日経平均値が33,551円(2023年9月18日15:00の引け値)
市場は経済のバランスを均等化させるのがその機能だ
株式の市場が成長させるもものでもなく、破壊させるものでもない
上場した企業の成長力を図るバランシートが、その市場の鏡だ
その鏡に映し出されてゆくのが株式の価格を作り上げ、市場を形成していく
政府や市場の掛け声だけで、その企業が成長することは不可能だ
少し見えてきた環境の変化とは、市場の現実を見始めた姿勢の変化といえる
PBR1倍以下がもたらす上場企業の破綻劇はニュースにもならないが
バブルの崩壊後に物静かに始まり、粛々と買収は進んでいる
この問題を今年の4月から東証が会見を開き企業へ改善を要求した
次にとるべき政策は、企業のスクリーニングだ
成長性なき企業を引退させ、成長性のある企業に対する資本の移動が必須と
これが株式市場の原理原則であり、必然的な資本主義の真骨頂である
自由な競争の原理により、技術やサービスの向上が起こり
原価とは無関係に商品やサービスの価格が決定する
この市場原理の世界では、製造の原価に依存せず、需要と供給のバランスで価格が決定する
さらにTOPが加わり、取引の時間/場所/要件の3つの要素でほぼ価格が決定される
いくら高く売ってくださいと企業に懇願したところで、市場で売れることはまずない
バブルが崩壊し30年が経過し、日本の経済が再考できる機会が市場に出現するのか
そのヒントとなるのが世界の金利動向にあると提起する
欧米の先進国はインフラの上昇に伴い金利を上昇させ、物価の抑制を掛けづづけた
リーマンショック後の経済下では、日本と同様にマイナスレートを駆使し、超低金利で乗り切った
その金利を未だに続けているのがこの日本である
日銀の金利上昇により、国債の暴落から円が破綻し、日本の円が崩壊する説が一部にはある
確かに日銀が1000兆円を超える発行残高の半分以上を保有しているのは事実だが
発行する国債には長期10年を軸に必ず満期がある
発行された国債はこの満期日に政府が借入金を保有者に決済する、これが国債である
実に単純な話であるが、日銀が市場で国債を売却するという選択肢が、皆無であるということだ
上記の破綻説では、金利上昇に伴う国債の暴落率が20%発生し、評価損が200兆円発生したとすると
発生した200兆円の含み損の評価で日銀の株価が暴落し、破綻するという論拠となっているが
戦費の調達で国債を乱発した戦前の財務戦略と比較しても、その波及効果は知れている
戦後78年が経過し、高度成長期、バブル崩壊を経て沈黙する日本の経済
明治維新に掲げた近代経済の導入を新たに見つめ直し、これからの経済復興のカギは企業の成長性の評価とみる
即ち、市場をマクロ経済により見通しし、潜在需要を掘り起こし、市場原理により、商品とサービスの開発を進める
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