世界的なインフレの転換は、
国民の所得を増やす機会を与えるのか?
発刊日:2022年1月12日
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令和4年(2022年)の幕が開けた。
昨年度の第一刊では、食料安全保障の話をした。
コロナ過の人手不足を理由に、国際物流が麻痺し、食料を含む世界の物価が上昇している。
千葉県の生産農家の方から、肥料急上昇の話を聞いたのが昨年の春ごろであった。
されど、日本に限り、今起きている物価の上昇には少し不思議な点がある。
一つは経済成長との互換性、二つ目は賃金の上昇がともなっていない、この2点だ。
1ドルが360円という固定レートが始まった1949年の翌年、朝鮮戦争が突然、始まった。
この米ソの代理戦争が背景にもあり、輸出の需要が供給をはるかに上回る戦争特需がひっ迫した。
原油ショックなどの外的要因もあったが、必然的にインフレが発生し、プラスの経済循環で経済は成長した。
その翌年、1960年に池田内閣が打った個人所得倍増論が国内を喚起した。
当時の国内には、先の大戦からの復興も願い、国家総動員で日本経済を立て直した。
そして、高度成長期を迎え、日本の個人GDPは米国に続き世界第二位まで上り詰めた。
令和3年11月10日、岸田内閣が発足し、新しい資本主義をテーマに成長と分配を国民に約束した。
されど、日本の経済界では、個人賃金の上昇をあまり歓迎できなかった。
発案した岸田総理自身も、今回の円安は芳しくない円安だと心を開いた。
コロナの前までは、円安の局面が訪れると一斉に歓迎した。
輸出企業の想定レートが上昇することで、為替利益が発生し、輸出競争力が伸びるという理論だ。
ただし、円安による利益など、一時的な博打の利益と何ら変わることはない。
円安は同時に輸入コストを押し上げるマイナス要素が消去させているからだ。
今、起きている世界的なインフレ傾向には、目先の円安利益と同様にグレーゾーンがある。
それは、輸入物価だけにインフレが発動したことだ。
バブル崩壊後、悪夢の10年と云われた経済の低迷、既に30年が経過してしまった。
資本主義を唱える日本の個人所得を上昇させるには、何が足りないのか。
それは、希望だ。先が見えない、どうなるかわからない、今やっても無駄。これでは、経済は成長しない。
所詮、経済は市場で働く勤労者と経営者が一陣となって成就する社会の活動だ。
政府が予算を付けたり、労働規制法で労働者の権利を守ったり、法で縛っても企業は成長しない。
結果、企業収益を社員へ還元する選択を選ばず、内部留保を可処分所得などへの本業外の投資に向かったのがバブル経済でもあった。
発想を転換し、一つ、考えてみる。
経営者は株主と従業員は経営者と、全く公平な定義をしてみよう。
それは、企業収益の還元方法を規約にしてみることだ。
今、世界の上場企業は、高い株主配当を公約に上場し、市場で資金調達をしている。
外部資本を導入する企業を見る限り、企業の経営者は株主と既に高配当の目標が暗黙の了解で規定されている。
残るは、経営者と従業員との配当分配方式を決めるステージだ。
従業員が株主と同様に労働組合や社員持ち株会のほか、従業員を総動員して企業収益の返還を要求するというプランだ。
ストライキによる要求ではなく、自分たち企業の永続的な成長を願い、胸襟を開き、万機公論に決するという手法だ。
一般的に人件費を年度予算の総枠で確保し、給与規定によって支給される。
この分配する手法を企業の予算枠に組み入れし、人件費の総枠を販管費(コスト)とせず、企業の収益から還元する。
従業員も皆、企業の役員と同様に企業の収益から所得を還元する仕組みを取り付ける
この導入により、社員も経営者と同様の立場で事業に参加することとなる。
2045年問題という言葉もあるが、高度成長期が終わった今
労働という義務を捨て、経営に参加することで、機械やロボットがする"労働"と区別する必要があるのでは
政府が掲げている成長と分配により、バブル崩壊を逆転する新しい"決断"が始まることを切に願う。
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