食糧危機という"招かざる客"
発刊日:2022年4月12日
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ウクライナ紛争の影響が穀類の相場を押し上げている。
パンやパスタ、うどん、ラーメンなどの原材料は、全て小麦粉から作られている
小麦の相場(米国先物市場)での相場を少し眺めてみる。
今月に入り、2016年8月の暴騰期に付けた1,069ドルを軽く抜け
現在も続々と最高値を更新中である。
ここ10年間の最安値が380ドル近辺であったことと考えると約3倍の高値相場だ。
では、小麦の最大の輸出国はどうなっているのか
小麦の世界輸出大国は、オーストラリアや米国ではなく、ロシアが世界ナンバー1
そして、対戦国のウクライナが世界ナンバー5である。
その輸出規模は、合算すると25.2%のトップシェアーとなる壮絶な規模である。
基軸通貨たる米ドルが、今回の紛争勃発により、いとも簡単にドルを封鎖した。
世界無二の基軸通貨としての輝きに、少し陰りが見え始めているのか
戦前の日本政府も米ドル資産の凍結を受け
エネルギー関連物質の輸出指し止めを受けた暗黒の時代もあった。
ロシアは世界に向けて、一つのメッセージを発した。
「基軸通貨たるドル資産を凍結するようでは、基軸通貨としてのドルは終わりだ」とした。
この論理は、的を得た正論である
資本主義を標榜し、民主主義を統治するならば、ことさら契約行為は厳守すべきである。
今回の紛争勃発を理由に米ドル資産の凍結を実施したが、
弾道ミサイルで敵国の中央銀行を狙撃することと、全く同じことだ。
基軸通貨たる米ドルが没収され、エネルギーや穀類の取引が一切停止された。
金やダイヤモンドと違い、通貨は単なる代価交換の「もの」だ。
日本の江戸時代は、お米で日本の経済が動き、人や物がそれこそ、国中を走り回った。
年貢として米を収め、一般財政が動き、全国の城下町や港での経済活動が循環し、盛んになった。
その通貨の価値が下がる、ということは何か。
それは、更に、もっと沢山の「通貨」を頂かないと、様々な物資と交換できないということだ。
通貨の全量と物質の全量の価値は等しい。
参考に、素粒子及び核物理、宇宙論の分野で用いられる、質量保存の法則がある
すべての物質は、分解しようが融合させようが、燃焼させたところで、その前後の質量は全く変わらないとする法則だ。
超インフレ国家が、財政赤字の補填に紙幣を刷れば刷るほど、
通貨の価値(質量)が低下し、結果、通貨が紙くずになる。
インフレが起きてから、通貨を増発するのではなく、通貨の増発により、インフレを招くのが道理だ。
原油は120ドル台の高値相場に突入し、昨日、金の先物相場が@8,000円/gを超えてしまった。
引き続き、小麦が3倍になり、畜産原料のコーンなどの急騰が後追いしていく、凄まじい相場の変動だ
再度、申し上げる。インフレは需要の拡大だけでは、決して起こらない。
通貨の信認が低下するときに起こり始める、ものやサービスとの交換レートの変動だ。
旧日本のバブルの時代に、国内で資産インフレが起こった。
より沢山の通貨を要求した結果
通貨との交換物質である「資産」が対比して、異常なまでに、これが上昇した。
さて、国際的な経済に目線を戻す。
エネルギーや穀類などの商品は、基軸通貨の米ドルで取引されている。
インフレが始まっている世界的な変動は、基軸通貨たる米ドルの信認低下の始まりか
米国FRBが中々銀行レートを上昇させず、今回のようなドル封鎖たる禁じ手もいとも簡単に執行した
一度暴落した、ビットコインなどの仮想通貨も、基軸通貨の滅失と共に時代が来るのか
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