スタグフレーションの時代で、何が変わる?
発刊日:2021年10月12日
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日本人が得意とする造語の言葉であるが、スタグフレーションという経済用語がある
従来、経済が成長するのと連動して、所得が増加し、購買力の増加により物価が上昇する
これが、一般的なインフレーションだ。
このスタグフレーションは、経済が不景気な状況下で起こる物価の上昇だ
中国の内需拡大への転換に伴い、国内不動産バブルの清算を静かに始めている#習主席だが
コロナの影響による労働力の減少化問題は、生産力に直結した。
コロナの初期には、半導体輸出の減少に伴い、今もなお製品の生産が制限されている業態も多い。
更に船舶の人工も世界的に減少し、国際的航路の運賃は2倍程度に急騰した。
船舶運賃の高騰を一番に影響するのが、経済の要と云われている原油の世界だ。
専用のタンカーで採掘した油を運び、世界中の製油所まで、油を届ける。
原油相場は、1バーレル60ドル台から上昇し、現在では80ドル近辺で推移しているが
原油の世界は1バーレル30ドルが再エネルギー生産コストの分岐点と云われている。
原油相場が、30ドルを切れば、その時点から
太陽光や風力発電などの#再生エネルギーの生産コストを#割ってしまうということだ。
されど、原油の高騰が続き高値での安定が続くと、当然、ガソリン価格の高騰を招き、物流費の上昇へと、転嫁する。
さて、スタグフレーションは経済の拡大傾向とは全く無縁のインフレーションと説明したが、
なぜ、起こるのか、需要の拡大がともなわない物価の上昇とはどのような背景が見え隠れしているのか
需要が停滞している経済であれば、取引が減少し、物価が下がるのが当然だ。
1970年10月に起こった、オイルショックという、物価の上昇期があった。
中東の産油国が一気に、70%も原油の価格を引き上げた。
このときは、産油国が協定を結び、有無を言わさず、価格の引き上げに走った。
この物価急騰の時代に生まれた造語が、スタグフレーションであった。
オイルショックと同様に経済の成長や購買力の増加に連動した価格の上昇ではなく
エネルギー資源及び食糧、資材などの経済インフラに影響の高い生産物の急激な値上げで起こるのである。
そこでターゲットとなるのが、G7の中央銀行だ
中央銀行は、国内の都市銀行へ資金を供給する。その金融政策が大きくかかわってくると予想できる。
リーマンショックの後、G7を中心に世界の中央銀行はマイナスレートの禁じ手を暗中模索でこれを打ち続けた。
堅調な経済成長の支えられている米国でも、マイナスレート時代から脱却し、市中金利を上昇に転換させている状況だ。
世界の中央銀行からのとてつもなく巨大な資金が世界中のマーケットを寡占し、
株式から債券に始まり、商品および通貨先物へと、その資金が流入し、先物価格から現物相場を押し上げるような基調となった。
ここで大事な点がある
このスタグフレーションは、日本の影響が相対的に大きいということだ。
物価が上昇するのに賃金が上がっていない、摩訶不思議な経済状況であるといえるが
岸田総理が総裁選の際に宣言した所得倍増論は、このスタグフレーション下では、至難の業であると推察できる。
個人所得の倍増をするには、1)購買力の倍増 2)需要の倍増 3)潜在需要を覚醒させ倍増 この3つが設定できるが、
仮に最低賃金を2倍に引き上げても、決して、上記の 1)2)3)の何れも成就することはできない。
AIがものを生産し、AIが物流を管理する時代となっている今、法人所得の下限を法で定めたところで、企業が労働者に支払う賃金の総額は決して増えることはない
この論理は、政府がいくら増税しても税収がなかなか増えない現象と同義だ
所得税などが増えれば、労働意欲が減少傾向となるか、高額所得者は海外栄転するか
結果は、図らずとも見えている。
2045年問題、という、社会的課題を抱えているこの時代に
労働という義務の対価を給与で受け取る取引から、自己の能力を企業に提供し、企業から配当を得る
AIやロボット、遺伝子組み換えの技術が、目に留まらない程の速さで、急激に向上し、より、労働という言葉は何れ死語となり、賃金から報酬へと、変化する時代となるのか
今、国内では、株式、為替、債券のトリプル安の傾向で、ドル高/円安へのシフトが徐々に始まった。
戦後の高度成長のピークを、バブル経済で崩壊させ、人工知能が労働を侵食し、仕事の本質が進化し始めたのかもしれない。