
米ドルの金本位制度と日中共同声明について
発刊日:2025年11月12日
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米国の金本位制度と日中関係について、以下、筆を下ろす。末尾に記載した文章は1972年に日本の田中角栄総理と中国の周恩来首相との間で築かれた日中共同声明の原文。戦後の体制変革がゆるりと始まったこの期であったが、今月号では、ドルの金本位制度とこの条文との関係について少し考察してみることとした。
(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html) |
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当時、共同声明が発表される前の1971年8月15日にあのニクソンショックが発生した。戦後、米国は金と米ドルとの価格を固定し、1オンスと35米ドルとの交換を保証するブレトンウッズ体制により、国際通貨としての確固たる覇権を掌握した。日本及び近隣のアジア諸国も後に、高度成長に連動して多くのドル資産を増加させ、世界でドルの発行が急速に膨張してきた。 |
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金は各国の中央銀行の保有資産として留まらず、半導体や宝飾品としての需要も旺盛に増加したこともあり、金の現物が不足し始めたのが当時の評価でもあった。世界に大量の米国債が流通しドルの地位は不動のものとなった。米国政府は勇断をもって決断した。金とドルとの交換を廃止し、米ドルの価値を市場に託した。世界一の通貨と成し遂げた金との交換条約を米国一国の決断で廃止したのだ。 |
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当時、日本政府はシンプルな輸出政策を根本からシフトした。白物家電から始まった国内の工業生産の国家体制を、より高度な半導体装置へと、バトンをシフト。工場を国内から海外生産へと拠点を移管し、米国を中心とした輸出業務を増大化させた。そして世界に先駆けて大量の米国債を保有し、米国について世界第二位の経済大国(日本は1人当たりの個人所得で世界第2位)に上り詰めた。 |
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そして、日本の産業構造は劇的に変わった。小さな自国体制から世界に向けたグローバル産業構造への改革がその原動力でもあった。金ショックが発生し、米ドルが変動相場制に代わると、音を立てて米ドルが急降下し、日本のバブル経済が始まるころには1ドル125円程度となり、何もせずに為替は3分の1まで急降下で急落し、日本のマネーは世界の市場に投下された。 |
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今、日本と中国に同時に起きているのは米国の関税ミサイルに対する対処だが、今、ニューヨークの金融街でささやかれているトピックスの一つに、トランプ大統領による金本位制度の復活がある。当時の金1オンスを35ドルで交換したが、この2025年の今、1オンスが4,088ドル(NY/先物)となっている。仮に復活をすると1ドルを125円(相当)と固定で交換率を固定することとなる。その思惑も影響し、3,000ドルを超えても調整が進まず、4,200ドルレベルまで金の高値は不思議と続いた。 |
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トランプ政権下ではドル安へ誘導し、貿易黒字の増大化を図るのが最大の狙いだ。対ドルで金を固定化する金本位が復活するならば、中国が国策とする自国通貨安の政策に大きなダメージが生じ、中国の政府は政策の舵取りを急遽変えざるを得ない。米国に依存する政策を脱却し、内需拡大の劇的な国家変革に迫られることと予測する。グローバルリズムは均衡化した時点で停止する、そこに成長はない。 |
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今、対立を高めるような世論誘導に乗じず、日中共同声明で表明したように経済の確固たる関係を再構築する事こそ、両国の発展に記する課題と見据え、日中関係の貿易取引を強化するのも米国のトランプ関税対策やもしれない。AIのブームも一服し、来年度からはAIが引き起こして来る市場の構造変換期と見るAIはあくまでもソフトウェアだ。プログラムにより動く単なる発令装置だが、その社会的な影響は底なしに恐ろしいものだ。 |
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2045年を待たずに、2030年ごろからこの日本も大卒の失業者が増加すると考える。理工系の技術者が就職困難となり、文系の学生がその主戦場を制覇する事であろう。最近のGoogleⓇなどの検索結果が根本的に全く変わってきた。検索結果を表示するのではなく、自社の頭脳で分析した結果を表明している。これはAI頭脳を駆使して、Googleのロボットエンジンが世界数十億のサイト情報をかき集めて成し遂げている業だ。 |
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中国では大卒の失業者が18.9%(参照:google/Ai)と云われている。自動車で苦しんだ当時の日本は、部品に始まる一貫した自国生産をシフトし、部品レベルでの海外生産を増強させ、海外生産を逆輸入せず、更に海外への輸出を選択した。中国と日本は、祖国の国益を踏まえても二国間の関税協定を見直しし、一律10%の輸入関税など、シンプルな貿易友好協定を日中共同声明を構築できることを願う。 |
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~ 以下、条文 ~ |
日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約 |
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日本国及び中華人民共和国は、千九百七十二年九月二十九日に北京で日本国政府及び中華人民共和国政府が共同声明を発出して以来、両国政府及び両国民の間の友好関係が新しい基礎の上に大きな発展を遂げていることを満足の意をもつて回顧し、前記の共同声明が両国間の平和友好関係の基礎となるものであること及び前記の共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されるべきことを確認し、国際連合憲章の原則が十分に尊重されるべきことを確認し、アジア及び世界の平和及び安定に寄与することを希望し、両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため、平和友好条約を締結することに決定し、このため、次のとおりそれぞれ全権委員を任命した。 日本国 外務大臣 園田 直 中華人民共和国 外交部長 黄 華 |
| 第一条 |
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1 両締約国は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に、両国間の恒久的な平和友好関係を発展させるものとする。 2 両締約国は、前記の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。 |
| 第二条 |
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両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する。 |
| 第三条 |
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両締約国は、善隣友好の精神に基づき、かつ、平等及び互恵並びに内政に対する相互不干渉の原則に従い、両国間の経済関係及び文化関係の一層の発展並びに両国民の交流の促進のために努力する。 |
| 第四条 |
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この条約は、第三国との関係に関する各締約国の立場に影響を及ぼすものではない。 |
| 第五条 |
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1 この条約は、批准されるものとし、東京で行われる批准書の交換の日に効力を生ずる。この条約は、十年間効力を有するものとし、その後は、2の規定に定めるところによつて終了するまで効力を存続する。 2 いずれの一方の締約国も、一年前に他方の締約国に対して文書による予告を与えることにより、最初の十年の期間の満了の際またはその後いつでもこの条約を終了させることができる。 |
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