大企業の利益剰余金は600兆円を突破
発刊日:2025年1月12日
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ここ数年前に300兆円という数字で世間を騒がしていた企業の余剰金であったが、その倍の600兆をゆうに超えた。公表されているこの数値は、米国のGoogleⓇ社がインターネット上で提供しているAIの解析数値だ。2024年の4-6期、日本のGDPは600兆円超えることがようやくできた |
国内の企業と個人及び設備投資の総額と並ぶ企業の内部留保の資金。米国企業の内部留保は3.2兆ドルと云われており、156円換算で499.2兆円しかならない。経済の規模を示すGDPベースが2024年度は概算で28兆円相当と見受けられるが、1ドル156円ベース換算で4,368兆円となり、世界一の経済規模を有す |
先の米国企業の内部留保金500兆円をGDP値で計算すると11.4%相当の比率となる。所得の1割程度なら相応な積立金として理解はできる。問題は、国内の利益剰余金の対GDP比率である。国内GDPと企業留保金がほぼ同額であることから、満額の100%相当が企業に積立されている。なぜ、この600兆円が市中に流用され、経済に循環していかないのか |
先月号では、直接税や社会福祉の費用負担が流通のアキレスとなり、資金の流通を阻害しているのではないかとした。引き続き、企業に内部留保金が異常に蓄積されている実情を解析していく。その要所を 1)税制度 と 2)企業配当 との観点から、今月号の解析を展開する |
まず、税制度からは減価償却の制度を挙げる。工場や店舗などの設備は減価償却資産である。この減価償却資産を企業が購入すると購入代金の10~20%と減価償却ができる代物だ。複式簿記の優れた会計機能の一つだが、特に大企業ほどこの減価償却の資産を購入する傾向がある。 |
企業の剰余金は何も現金で保有することはなく、利益剰余金として資本と同等の項目として決算に計上されている。決算書上は純資産の部類に含まれるが、なにも現金で保有することはない。その剰余金を設備投資に回すのが多くの大企業が活用している経営手法といえる。家賃やリース代金を負担するとB/S上の損金となるが、自社で設備投資を実施することで、損金とはならず資産の減少は起こらず、決算利益を減価償却で減額できることで、経費を支払ずして利益を拡大できる |
そこで、日本の大企業に求められてくるのが、箱もの投資からの脱却だ。人工が急騰した戦後の急成長の時代であるならば、大量生産を可能とする大型の設備が必須となるが、人口が減少し、数と量で戦う時代が終わった今、21世紀のビジネスは"質"の時代へシフトした。よって、節税目的の箱もの投資から企業収益を上げる"質"への投資が求められる |
次に、企業の配当である。東証に上場する企業の2024年度3月期の配当総額(自社株買いを含む)は25兆円程度となった。時価総額の概算が1,000兆円であることから、日本の株式配当率は2.5%程度となっている。その背景には戦後の持ち株制度による安定株主の基盤により、市場要求が経営に反映されてこなかったのがその要因だ。東証はこの課題解決の目的で、プライム企業に対し、自社株買いの要請を図り、多くの企業が自社株買いを推進している |
されど、株価が急騰し安定した成長路線は難しかった。余剰金で自社株買いを刷れば目先の投資を促進することはできるが、市場から求められているのは、企業利益の向上だ。上場会社の財務分析をしていると決算利益の30%相当が株主へ還元されている。可及的速やかに実施できるのが、この配当還元率の向上だ、株主への利益還元は資本主義の根幹をなす経済原理の本流であり、直接金融の原型を構築している。 |
この配当還元率が低いことから、企業に膨大な余剰金が蓄積されていくのである。東証株式の配当率が2.5%程度であるが、仮に配当還元率を30%から50%に引き上げるだけで、約16兆円程度の資金が市中に還流され、対GDPの2.6%程度とその経済効果は凄まじく大きい。さらに配当率が2倍近く上昇することから、投資家の期待も膨らみ、現在の株価が5割程度上がるのは必須だ。 |
日経225が6万円台の時代に突入し、それでも国際市場のパワーバランスから観てもまだまだ安すぎるのが現状だ。余剰金の自社株買いという小手先の対応に終始せず。企業が持つ社会的使命感は投資家への収益還元であり、配当の還付が経営者の義務といえる。この高配当政策への転換こそが新たな日本経済への復活の証になることは間違いない。 |
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