米ドルの国際基軸通貨としての寿命に、少し陰りが見え始めた
発刊日:2025年6月12日
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36兆ドル(5,220兆円)、世界に発行され流通している米国債の総額だ。米国のFRBが市場から調達したこの資金が世界の原油調達やレアメタルなどの調達に使用されている。先の戦争までの時代はイギリスのポンドがその覇権を締め、先進国を始め世界の各国がポンドを貿易決済としていた。後にイギリスが計画を実行し、サウジを中心にイラン、イラク、クウェート、ベネズエラの5カ国でOPECを形成した。これが米ドルの世界覇権の狼煙となった。 |
この湾岸諸国連合の基本方針は石油のドル決済を掲げ、中東から産出し世界へ輸出する原油の代金を米国のドル決済とする慣例を統制した。日本を始め世界の各国は原油の決済原資を確保するために国策として海外への輸出攻勢を開始した。これが、戦後のグローバル体制の初動となった。さらにWTOが中心となり、ECCがEUとなった経緯と同様にEUばかりか太平洋湾岸諸国まで海域を広げ、貿易関税を撤廃するフリー関税協定が推進した。 |
これに異を唱え続けた米国のトランプ大統領は、このフリー関税協定はECCの前例が如く、国家の国境線を消滅させる最大限のリスクと認定した。そのトランプ関税が配信された本年、イスラエルとイランの戦闘が始まった。ロシアからも戦争の仲裁の声が掛かり、この戦争の背景にあることの重大さが鮮明と映し出されている。ウクライナでの戦争では、小麦などの穀類の価格が急騰し、世界の食料コストが様変わりしてしまった。次は、イランでの戦闘開始で、原油の相場が様子を見ている。 |
トランプ関税の声明が発表された後、NY先物市場で1バーレル55ドルの一時的な底値を付けていた。されど、イスラエルとイランとの開戦により、相場は急転し、6月13日には78ドルと僅か1カ月程度で約40%も価格がアップしてしまった。食料高の影響では国内でのコメ価格問題へとその影響が拡大されているが、米国の要求たる核保有の廃止をイラン政府が許諾できるのか否か、1962年のキューバ危機以来の世界の原油市場は究極の緊張感を醸し出している。 |
さる2016年、イランが経済制裁の解除を受け輸出を始めた際に米ドルからユーロへの決済手段を返納した。徐々にではあるが、原油の決済代金が米ドル以外の通貨へと既に、この激動は始まっていた。万が一、イランが米国の仲裁条件を拒否し、止むを得ず米国の参戦を受け入れる事態となろうとも、EUが中心となりイランを後方支援する期待感が少なからずイランにあるのではと考える。 |
1955年に始まったベトナム戦争では、米国と旧ソ連との思想的な代理戦争であり、当時の東西冷戦構造を世界で完成させた戦略的なメッセージともなった。このイラン戦争は、WTOを駆使しフリー関税を鍵にEUを建国したグローバル勢力を阻止する米国と、フリー関税協定を協力に邁進させ、ECCからECという統合的な国家を形成した、グローバル国家連合との新しい戦闘ステージと分析する。 |
この背景から米ドルがどこまで国際通貨としてこの地位を維持できるものかを考察してみたい。先のポンドからドルへの覇権シフトでは戦後処理の主導権を握った米国がそのポジションを握り、当時のイギリスと合意してその通貨覇権を米ドルへシフトした。先の大戦と同様に通貨覇権のシフトは戦争の終息期に起こっていたのも事実である。 |
戦後のドルは金本位制度でデビューし、ニクソンショックと言われた金本位制度の崩壊でドル発行の自由度が格段と高まった。結果、35兆ドルという巨大な資金が世界に流通しているが、米ドルに次ぐ、世界第二位の通貨は先のユーロである。ユーロ経済圏のGDPは約18兆ドルで中国のGDPがほぼ同額の経済規模を確保し、様々な憶測もあるが経済の成長を遂げている。 |
中国の人民元は2015年のIMFにおいてSDRの構成通貨に指定され、EUと中国は経済的な協力関係を構築した。ここに映し出されてくるEUと中国の狙いは、則ち、米ドルを国際通貨基軸から脱落させることで国益が一致する。EUと中国は中国一帯一路の政策の下、EUとの経済協定を拡大させている。かたやEUは、中国の海洋進出の問題には全く干渉していない。まさに利害が一致している国家間の連携ともいえる。 |
肝心の米ドル覇権はこのイラン戦争の終結にも見えてくるやもしれない。以上の背景から、米国の要求をイランが承認する可能性は少し難しい予兆もする。されど、イランの核保有廃止の結論だけに照準を当てると、参戦も止む無しとする核保有国に向けた抑止力に期待できるのも事実だ。資本主義を否定するイディオローグの一つに「資本の競争が戦争を誘発するのでは」という風説も一部にはあるが、戦争に大量に資金が動くのも事実だ。 |
先の17日には、日銀が国債市場での買戻し枠を半減させたことで、市中レートが1.5%にも急騰した。市中で消化できない大量の国債を日銀が拾い上げ、相場の暴落を防ぎ、国内の銀行や証券会社が保有する大量の国債に対する含み損を抑制している。これがマイナスレートを行使して実行していた、イールドカーブコントロール(YCC)という日銀の金融政策だ。市中で安定した販売が難しい債権などを日銀が買取保有することで、日本の金融市場を安定化させる政策の一つだ。 |
米国も、先の大戦の戦費をYCCと同様の手法を活用して市場から戦費を調達していた様子だ。元来、このYCCは米国のFRBが開発した金融政策のようで、後に日銀がこの手法を採用し、国債の発行を安定させているようだ。先般、本ブラウザーで執筆した金利分離型国債なども同じくその手法は米国のFRBから学んだものと思われる。投資と貯蓄に2分している米国の金融市場では、積立投信の市場規模が成長し、急速に株式市場が形成されている。 |
さて、ドルに代わる、国際通貨基金の候補とは、思い浮かぶのは、EUのユーロ通貨がその要件を備えているようにも見える。今の人民元では、世界の市場規模も小さく、かつ、IMFでのSDR通貨としての参加に始まった新参者とも云える。昨今のメディアの論説の多くは、人民元の台頭を大鉈を振るって宣伝しているが、最大のライバルはユーロである可能性は、少なからず否定はできない。 |
AIの黎明期とも云われている1945年以降、想定されて行く新たな世界の経済秩序のなか、米ドルが国際通貨の覇権を維持することができるか否かは、ウクライナやイランの戦争終結にも大きく依存し、その終結の行く先に米ドルの命運がかかっている。その結果をもって、米ドルの寿命がどこまで続くかという未来に、少なからずイランやウクライナが決定する声明に掛かっていると推察した。 |
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