
自由民主党、55年体制の総決算
発刊日:2025年10月12日
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今、永田町では次期政権の樹立に向けて自民党が動いている。本命の日本維新の党は12の項目を要求している。この要求のうち、鍵となるのが「企業・団体献金の廃止」だ。この項目は今後の政局を占う上で必要不可欠な協議ポイントとなる。先の戦争が終結し、かっての自由党と日本民主党が合流し自由民主党が発足し、鳩山一郎が自民党の初代総裁となり、第52代内閣総理大臣となった。 |
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戦中の統制派の議員達がGHQの職権で追放されるなか、対日本社会党に対する穏健な保守派議員達の政党が政権を握った。これが戦後の55年体制の始まりであった。その2年後、1952年4月28にはサンフランシスコ講和条約により、連合国軍の占領政策は終わった。この条約により、連合国軍の占領は終了した。ただし、沖縄や小笠原諸島などの施政権はアメリカに委ねる条件での終戦であった。 |
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現在、日本維新の会が55年体制を作った自由民主党に対し、「企業及び団体献金の廃止」を訴えている。党内でも様々な意見もあり、大変難しい問題であることも事実だ。戦後の急成長期を作れたのは日本の人口増加が進み毎年右肩上がりで国内消費が膨大に急上昇していた。円が360円であったところで、住宅用の建材に始まり、道路造成の砂、日本国内のインフラを造成するだけで日本の経済は急成長できた。 |
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人口が1億2,808万人(概算)となり、日本の人口が2008年にピークを迎えた。不思議なことにこの2008年は米国のリーマンショックが世界に拡散し、銀行や証券業界の信頼を根底から揺らし続けていた。日本維新の会が主張する12の課題のうち、社会保障の問題などは全く同義の課題だ。2008年をピークに歪み始めた人口のピラミッドは不都合な日本の姿である。 |
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米国の人口ピラミッドは若年層の人口流入もあり、ベトナムなどの理想的なピラミッド型ではないが、少なくとも日本のような逆ピラミッド型の頭でっかちな形ではない。さて、この人口構造の劇的な変化をこども対策という穏やかな政策だけでこの経済不況を乗り切るのは到底むずかしい。その根は誠に深く、人口が減少している要因は国民の意識が昔と真逆に変化しているからとみる。 |
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東京オリンピックや旧大阪万博の時代は国民の目が輝いていた時代でもあった。中東の大戦で始まったオイルショックが到来した際であっても、国民や企業は高度成長期を迎え、進学や就職などの過渡な競争も、苦も無く乗り越えてきた。少なからず、その心意気を支えてきたのは働く国民の給与であったことはだれも否定はできない。一生懸命に家族のために働いてその所得が家族の生活を支えてきた。 |
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先の55年体制の発足から早や70年の2025年、この逆ピラミッドの人口構造を真正面から見つめ、戦後初めての経済改革の年が訪れている。高度成長期には誰が何を行うことなく、いくらでも国民の需要は増大化してきた。今、見つめ直すべき日本社会の課題は、すばり、国内の内需拡大と断言する。少なからず、米国のトランプ大統領は基本輸入関税を導入し、米国内需への変換を図る決断をした。今の維新の会が要求する12項目の中にどのように反映されているか検証してみよう。 |
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第一が経済財政、ガソリンの暫定税率の廃止と給付付き税額控除及び食品消費税2年間0だが、何れもここ2~3年目先の国民所得は増えるが、支払う企業側の所得向上を踏まえずに便宜的な所得の向上では永続的な所得向上に社会の流れが変わるとは期待ができない。このような手法は55年体制の旧来型の政治手法といえるのでは。国民全員に給付する一時金の様に選挙を見据えた小手先の戦略が伺える。 |
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次に社会保障、社会保険料の負担軽減。この問題も経済財政欄と同様に根本的な問題の解決には見えない。今、支出を減らせば、当然、給付が軽減し、今の若い人たちが社会保険料の支払いを敬遠する。まさに負のスパイラルが稼働し、さらに社会保険が機能しなくなり、破綻のリスクがさらに増大化していく。やはり、財源の明確な考察を消去したところで机上の空論にもなりえないのでは。 |
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第三の皇室及び憲法の改正、本件12項目の中で異色の課題である。終戦の翌年1946年に制定した現在の日本国憲法は成立から79年が経過した。切りのいい制定後100年の期に発効できるよう、政府が活用するパブリックコメントを国民を交えて憲法改定の草案を体系化していくのも一つの筋と考える。既存政党の意見で憲法の改定を行うのではなく、広く会議を起こし万機公論に決すべきと考える。 |
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外交安全保障だが、9条の改定を先行し自衛隊の国軍化を図る前に重要な政治の選択がある。それは国連やNATOとの関係をまずはっきりと線引きすべきだ。日米安全保障により米国と日本は軍事の同盟国である、ただし国連やNATOとの関係は何ら軍事同盟はない。昨今、ウクライナ戦の影響下で、日本から同一の軍隊へ軍事部品の輸出が始まっているが、急務の要件はシビリアンコントロールといわれている戦争の発動に関することが重要と考える。 |
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次のインテリジェンス、米国のCIAをイメージしているかのようだが、インテリジェンスには公的な情報と取得不可能な情報の収集と二通りあるが、おそらく公的な情報を指しているのかと思える。米国やロシアの諜報機関では外国の大使館と同様に治外法権的な処遇がある。統治下の法を守らない代わりに政府は救済しないのである。それが世界の諜報機関で則ち首相の決定権を準備せずとも軍隊と同期の軍事的組織が独自の決断で稼働する組織が諜報機関の特徴か。 |
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6番目のエネルギーでは、原発の再稼働を掲げている。原油が高止まりし、二酸化炭素の放出問題が世界で騒がれている最中、クリーンエネルギーの旗手たる原子力発電エネルギーの再稼働は最適な判断と同意する。されど、いま世界で開発を進めている宇宙ソラーパネルの誘電装置や常温核融合による発電設備など、供給のインフラを必要としないエネルギーの供給技術には大いなる期待ができる。 |
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食糧の安保は、投資促進という方針に全くの同意といえる。従来の様に設備資金を銀行や農協が融資して農家に貸し付ける手法では、生産者たちの営業キャッシュフローの向上が難しく、なかなか成長産業へと発展できなかったのが今までの自民党の手法でもあった。投資がどのような手法をとるのかは、詳細が不明だが、仮に農水省が認定した農業法人等を指定し、経済産業省などの提携ファンドの活用する政策ファンドであれば評価は最大だ。 |
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次の安保だが、海底ケーブルの強靭化は中国などに対する国家防衛政策として提示していることと思えるが。実施する際は政府は行動計画を広く世界に配信し、確固たる方針を掲げ、厳かに進めていただけることを願う。南西諸島に限らず、世界は海底ケーブル網がつながっている。海域の安全を確保することは隣国との関係を強化する礎にもなり、意義のある政策と同意する。 |
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人口及び外国人、中央集権を解体し、地方分権を図り、東京集中の人口流動を還流させる狙いが伺えるが、本誌で提示する逆ピラミッドの人口問題には触れていない模様だ。海外の移民問題にも様々な意見もあるが、米国はこの移民政策で若年層の人口流入を流動させ、かろうじて人口問題の解決をギリギリで解決したようだ。その前提からも感情的な人口の流入に断固たる措置をとる対策には問題も残る。重要なのは不法移民や外国人犯罪者の強力な取り締まりだ。 |
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教育では、高校の無償化や給食の無償化を掲げている。これには無条件で賛成だ。こどもの10人に1人の割合で生活に困窮する子供がいると伝わる。学校や給食などは国費で賄い、親の経済負担を避けるのは自然である。学校に通う子供が約1,000万名、1年間に185回食の提供で1食当たり@250円換算で計算すると、1000万人×185食×250円=4,625億円(概算値)となる。一般会計予算で5,000億円程度の財源が確保できれば学校給食の無償化が開かれる。 |
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11番目の統治改革機構、これは日本維新の会、肝いりの構想のようだが、東京の一極集中を避け大阪や他の都市に政府機能を分散するという構想のようだ。既にさいたま新都心合同庁舎があり、労働基準監督署なども行政機能を移転している。さて、東京大地震も世間でささやかれている最中、東京から地方へ行政機能の移転をイメージすると、最大の効果は人口の流動化には期待できるが、東京の発展には一抹の不安も残るのが実情。経済効果を踏まえて考えると食糧安保を掌る農水省が北海道、国家の安全保障を担う内閣府が淡路島、という見方も一理あり。 |
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最後の12項目たる企業団体献金の廃止、この問題にどう対応するかで自民党の今後が見えてくると推察する。もともとこの政策を提案してきたのは日本共産党であったが、政治政党が企業や団体から献金をもらい政治を掌るのは到底許されることではない。NHKが国民から視聴料を徴収するだけでも難儀な世の中である。政治献金を政治団体が消去することは戦後55年体制の総決算にも写る。日本の政治が真に開かれるか否か、21日に予定する首班指名まで自由民主党の英断を待つ。
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