国家はAI社会をどう受け止めるべきか
発刊日:2025年9月12日
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AIの頭脳を例えた表現に以下のような実に分かりやすいコメントがあった。「 ~ 東大での優秀な新入社員をイメージして下さい、教えて指示をすれば、社内の誰よりも正確に仕事をするが、仮に教えたり指示をしないと、全くなにもしない。」需要が縮小する時代における再生の要件は新規市場の開拓に他ならない。自国の縮小する市場を奪い合い、市場淘汰される敗北者を政府が救済する中身のないポピュリズムの典型だ。 |
全く新しいマーケットを送り出さない限り経済は成長しない。万が一、AIを単なるコストカットの道具と選択した場合、その国の経済は破綻する可能性が高い。現在、当会が研究し開拓する全124兆円のビッグマーケットがある。このデータを昇華させ、日本の食のニーズをAIが解析する。その活用者は、畑や田圃を持つ生産者の方々だ。決して流通を支配するビッグブローカー達ではない。 |
農産物の製品化率は収穫の20%程度しかない、さらに出荷しても流通のロスが3~5%、更にお店で供給した食品の廃棄ロスも発生する。これが、AIの頭脳を持つロボットの宿命だ。2045年に向け、全世界的なディープラーニング網により、思いや自己判断の意思を持つ人類のパートナーが生まれてくる時代が来ると予想する。その前に必要なことは流通コードの整備と物流の整備であることは言うまでもない。 |
あと20年で非生産部門の人材市場が壊滅するやも知れない。経済は顧客の需要さえ変化すればマーケットは変わる。常に商品の誕生と終焉を繰り返しながら市場は流動する。米が不足すると補助金をばら蒔き、個人消費が伸び悩むと最低賃金の底上げに翻弄している小手先のポピュリズムに窮しているようでは経済は成長しない。 |
戦後の日本を急成長させたのは、日本列島改造論であった。この政策こそ有効な民主主義であったとも言えよう。金権主義と当時のマスメディアでは一国の総理を断罪した。当時の田中角栄はどぶ板選挙を戦い、管轄の役人パワーをフルに活用し、土地の線引きを行い、農村を分離し、工業用地、商業用地、住宅用地と国家の方針を定め日本の土地をブランド化した。 |
日本経済の祖と云われる渋沢栄一、現在の一万円札のモデルになっている。田中角栄は対世界に向けて日本を成長させたが渋沢栄一は日本経済の礎を築いた功績である。その渋沢栄一も明治の新政府が立ち上がる前の江戸末期、当時の高崎城を乗っ取り、尊王攘夷の政治的なクーデター計画に参加する予定でもあった。 |
兄からの中止要請を受けて渋沢は1983年このクーデターを中止した。後の1867年に徳川昭武に随行してパリ万国博覧会に出席するためフランスに渡航、近代社会の資本主義経済を目の当たりにした。帰国後、日銀の設立へ向け、日本国立銀行法を成立させた。資金の供給元としての国立銀行から創立し、経済の仕組みを作り上げるべきと決断したのであろう。 |
先の江戸時代の藩札などは全て廃止され、一切の紙幣や通貨の発行を一元化した。旧第一銀行とみずほ銀行が中心となり、現在の日本銀行の体制を創立させ、日本銀行券を発行、日本の経済が世界に向け発動する時代が到来した。この成立により、株式会社の制度を新しく創設、会社の定款を作り発起人の役割により、第三者からの資金も含み出資を募り、日本の資本主義が始まった。 |
現在、2025年度の予想で日本のGDPはインドに抜かれ世界第5位になると市場では云われているが、その原型は今から143年前の明治15年であった。この経済成長はドル建て換算であることから世界の順位だけで成長率を図るのはいささか不正確な気もするが、1990年に始まったバブル崩壊後の日本に成長につながるプラス材料は見つかることが少なかった。 |
ここ数年前から、日本のニューマに変化が生じてきた。バブルが崩壊して30年を経過したあたりから、国民の意識が変わった。その兆候は2009年が最初の年だ。自民党が歴史的な惨敗を起こし、民主党が政権を握った年だ。当時の選挙民は、民主党に期待しての投票というよりは、自民党に対する灸をすえた様相であった。 |
今、医療の進化と共に自然と高齢化が進み、先進国の国々ではピラミット構造の社会形成が逆転した。人口増という社会現象は、経済の需要を何ら策も心へも必要とせず、急激な変化を生んだ。ものを作り、国民や企業に資金を供給さえすれば自然と社会は成長できた。世界はAIの時代を迎え始め、ギリシャ隣国のアゼルバイジャンではAI大臣が遂に登場する時代となった。 |
既にAIの人格化問題が露出してきたともいえる。前月の68号でも記したが、情報の選択にAIを活用するのが人類の選択とすべき方針と考える。一人の政治家として政府が正式に大臣と認定したとなれば、このAI大臣は少なくとも政治の執行権を有し、何らかの決定権を持つこととなる。現在、AIの活用が遅れているこの日本での現況を踏まえると、この問題は時の政府が可及的速やかに取り組むべき重要な政策課題の一つともいえる。 |
未だ、終息が見えないウクライナ紛争も急速に普及が進展したのがドローン攻撃であった。声明を持つ国家の兵隊が戦場に向かわずとも、超小型のドローン兵器が無人で敵陣地へ攻撃を仕掛ける。戦闘行為が低コスト化していくことで戦争の破壊リスクは更に拡大し、人類社会の消滅リスクを更に高めていく。 |
中国古来からの哲学に中庸という考えかたもある。極端な対立構造を拡大させず、敵をも尊重し、バランスを踏まえた落としどころを調整する手法のようだ。20世紀は先の大戦後、東西の冷戦構造が世界を作り、ベルリンの壁の崩壊からグローバル社会の到来が始まり、民族の対立する社会現象を形成した。
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21世紀は、この中庸が鍵となる世の中が訪れると推察する。対立は批判から生まれ、仮想敵を作ることで敵の敵が味方となるマジックのようだ。釈迦やキリストも誕生する前にいた、古代ソクラテスの哲学も同様に否定より肯定を志していたと推察できる。有名な「無知の知」という言葉がある。 |
このソクラテスは西洋哲学の祖と云われ、少なからず世界の宗教や思想家たちに多大なる影響を与えてきた。日本でいえば禅僧の坊主のような問答をなし、山の仙人のような雰囲気であったとも伝えられている。されど、彼以上にこの世の現実をすべて受け止めていた人物が、果たして、いたものであろうか。如何なる優秀な大学の教授も、聴衆の面前で一括して論破した、まさに仙人であった。 |
このソクラテスがこの2025年に生きていたならば、何を考え、何を思うことか。彼の残した言葉の中に「無知と知」があるが、世界一の無知なるものが当方であると説いたのだ。「世界一、ものごとを知らないのはこの私だ」と彼は説いた。西洋哲学の巨匠がこの言葉を発した。AIも喝破する事であろう、「その無知な私よりもさらに無知な頭脳、それがAIだ」と予測する。 |
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